つぶやき「ごみは売られている?」

★ゴミは減らない。だって「売っているから」★
毎朝の通勤途上、地元の松ケ丘地区で約30分、行きかう人たちに挨拶をしながら挨拶運動も兼ねてゴミを拾って歩いて早10年になりました。幸い?にも、毎朝拾っても、(ポイ捨て)ゴミは無くなることはなく、それはそれで思うところも多く、日々楽しみながら続けています。
丸10年、2,000回を超えた毎朝のゴミ拾いですが、その間にゴミや環境問題に対する一般の関心は益々高くなり、3R(リデュース、リユース、リサイクル)、LOHASなどの「専門用語」?はそれなりに浸透したように思います。しかしそれはあくまで「言葉」の浸透であって、一人ひとりが「将来の為の今の現実問題」として理解し、自分自身の足元を見ながら日々の暮らしの中で対策を実践しているかというと(自分も含めて)甚だ疑問です。
★短歌<空き缶に ペットボトルに ガラス瓶 売られたゴミの 命儚し>★
環境問題は表面的にはゴミや自然環境破壊の問題と捉えられがちですが、根っこを探っていくととても深いところに行きつきます。それは、政治・経済はもちろん、歴史・生物・科学・宗教・倫理・哲学など、あらゆる分野に関わるのです。別に問題を難しくしたり、すり替えるつもりはありません。この問題の根源を乱暴を承知で一言でいえば「人類の欲望の膨張」といったところでしょうか。そしてこの一言を肯定するならば、この問題の解決(正しくは拡大防止)策もまた一言で、「足るを知り、降りてゆく生き方をする」ということになると考えています。要は、贅沢をし、楽をしすぎた、ということです。
大戦が終わった後の日本は民主化、資本主義の路線を驀進し、瞬く間に経済大国になりました。戦争を経験した親たちは、2度とあんな悲惨な暮らしはしたくない、子どもたちには豊かな暮らしをさせたい、と必死に働きました。その結果、国は(経済的に)豊かになり、物は溢れ、食べるものはおろか、暮らして行くのに必要なものは総て、好みの中から(お金さえ出せば)自由に選べるという、夢の世界を実現しました。
その結果、より美味しいものを求める余り、食材を海外にまで求め、人口の増加とともに、高かった食料自給率も次第に落ち込み、今では半分も自給できない状態になりました。40%と言われる食糧自給率ですが、言いかえれば60%はお金を出して海外から買っている、ということです。乱暴ですが「お金」に価値がなくなった瞬間、日本は食べるものが今の40%しか無くなってしまう、とも考えられます。一方で、好みに合わない食材や過度に新鮮さを追求するあまり、売れ残った食品は捨てられ、ゴミの山を築いていったのです。産業革命以降、止まるところを知らない人間の欲望は科学の発展を後押しし、本来価値交換の媒介として生まれたはずの「お金」が、それ自身まるで「価値」があるかのような「お金至上主義」を生んでしまいました。お金さえあれば、いつでも、どんなものとでも交換できる(と錯覚させる)社会、それが現代です。その結果、物の価値判断は「必要なものを使い切る」まで、ではなくなり、「より便利で楽しく新しい物を飽きるまで」に変わりました。本来の価値に対して「付加価値」なる言葉も生まれました。結果として、食物だけでなく、科学の産物もまた「ゴミの山」を築くことになりました。より新しく、便利で、快適で、楽しいもの・・・もっともっと・・・よりもよりも・・・。
★短歌<目障りな 大型ごみは 野に山に 川に捨てれば わが庭綺麗>★
しかし、ここまで膨らんでしまった人間の欲望は萎(しぼ)ませることはできるのでしょうか?間違いのないのは、このままいけば、人類は自分の棲みかを、自分で破壊してしまうという近未来の現実でしょう。
これを、政治・行政の責にして、他人任せにしてしまうのは簡単です。しかし、行政は人間の暮らしや秩序の為のルールは作りますが、物を作ったり、消し去ったりすることはできないのです。その結果、現在まで見えないところに隠されてきた「ゴミの反撃」が始まったという訳です。
何が言いたいか・・・ゴミ問題、地球環境問題は政治・行政の問題ではなく、人間一人ひとりの問題なのです。まず自分の足元を、自分に身近なところから、考え直すことが必要なのです。それが、地球に存在する多様な生物の中で共生する人類の責務であり、後の地球に生きる子孫に対する真の愛情ではないでしょうか。
このことを念頭に置いたとき、政治や行政の役割は明確で、物の目的とライフサイクルの基準を明確に持ち生産を調整し、原材料の資源管理に気を配り、過度な物欲を戒め、物の価値を見極め、他と比較することのない個々人の真の豊かさを尊ぶ教育施策を施し、主観的な価値観による不要物=ゴミではなく、絶対的な価値を基準とした物の価値を普及させる施策を施すことが重要なのです。
★短歌<南極の 氷の危機に アザラシよ 動物園が 幸せ皮肉>★
五十嵐